妊娠を妨げる子宮因子不妊とは

子宮因子不妊は、妊娠のさまたげになるような子宮内外の形態異常のことを、いうことがあります。
具体的には、子宮腔の癒着、子宮内膜ポリープ、子宮筋腫、子宮奇形、炎症などが要因で、着床がうまくいかなかったり、受精卵の動きを妨害され、流早産に至る場合があります。

最も多いのは、子宮因子不妊の中では子宮筋腫でしょう。
子宮に生じる良性の腫瘍(コブ)を子宮筋腫といい、決して珍しいものではありません。
子宮筋腫の発症率は、成人女性の25%と伝えられているほどです。
コブの数は1コとは限らず、20個以上ある場合もありますし、サイズもまちまちです。
大人の頭と同じくらいもある大きなコブもあれば、ほんの小さなコブまで幅広くあります。

コブが生じる箇所も、限定されているわけではありません。
妊娠に関係ないケースもあれば、子宮内膜寄りになるにつれ、不妊の原因になりやすいといえます。
筋層内筋腫や粘膜下筋腫にコブができた場合、デコボコな子宮内膜になるので、早産、流産、不妊症などの可能性が高まります。

筋層内腫瘍や粘膜下筋腫になると、妊娠の可能性が低下します。
逆に、漿膜下筋腫が一番大きいにもかかわらず、妊娠できるということです。
子宮筋腫と合併する可能性が高く、妊娠が難しくなるのが子宮腺筋症です。
子宮筋層という筋肉内に子宮内膜組織が入るというもので、貧血や過多月経、重度の生理痛などを発症します。

子宮因子不妊のどれと診断された場合でも、経過観察だけでなく、手術を伝えられることも多くあります。
手術内容についてしっかりと説明を受け、医師と相談した上でどの方法が最善か選びましょう。

黄体機能不全による不妊

不妊や妊娠と向き合うとき、基礎体温の計測を開始すると、通常とは異なるラインのグラフが描かれる場合もあります。
黄体機能不全は、妊娠に向けての準備が体にまだ出来上がっていない状態のことをいいます。
基礎体温をつけるようになり、始めて聞いたという方も多いことでしょう。

女性ホルモンの分泌により、妊娠が可能になるよう調整されているものです。
卵子を2週間近くかけて排卵し、妊娠しなければまた月経によって新しい周期へのリセットをしています。
月経がスタートしてから排卵の期間は、優れた卵を育む時期で、排卵から高温期前半の時間は、着床を待っている時期ということになります。
これらが崩れてしまうと、黄体機能不全で子宮内膜感受性低下や卵胞発育不全なども考えられるようになるのです。
高温期は、妊娠しない限り続かないので、再び月経がきます。

黄体機能不全は、どのような基準で診断されるのでしょう。
体温の違いが、高温期と低温期で0.3度以内あること。
プロゲステロンが、10ng/ml未満。
高温期が、9日以内であること。
子宮内膜が、8mm以内の厚みを持っていることなどです。

黄体機能不全は、黄体ホルモンの分泌量が少ないことをいいます。
不妊症の要因として、黄体機能不全が関係していることも考えられるでしょう。
女性の体に大きく影響を与えるホルモンは、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類です。

黄体機能不全になるのは、子宮内膜の感受性が下がる、黄体形成ホルモン(LH)の分泌量が減る、卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌量が減ることがあげられます。

卵管障害による不妊

卵管障害が不妊の原因になることがあり、卵管性不妊と呼ばれます。
子宮の両側に1つずつある10センチくらいのものが卵管で、最も細い部分は1ミリほどの直径です。
卵管障害とは卵管が癒着したり詰まっているもので、卵管性不妊は受精卵や精子がここを通過できないため、妊娠に至ることができないので発生します。

不妊症の原因のおよそ3割は、卵管障害が原因と診断されていて、年々増加傾向にあるということです。
卵管障害が不妊を引き起こすしくみは、受精卵や精子が卵管を通過できないために、着床や受精に至らないということ以外に、「子宮外妊娠」と呼ばれる、卵管に受精卵が着床するという状況が起きることがあげられます。

卵管障害は、あまり本人が体調の異変に気付きにくいという傾向があります。
卵管の通貨具合を確認する卵管造影検査を受けるまでは、知ることがない女性も少なくありません。
卵管障害になったときの変化は、発熱、下腹部痛、においや色のあるおりものなどがあります。
癒着をしていたり、炎症をしているケースが多いものです。

卵管障害は、どうして発症するのでしょうか。
考えられるのは、腹部手術を受けた後の癒着、子宮内膜症、STD(性感染症)、細菌感染、炎症の腹腔内虫垂炎などが卵管に及ぶ、膣内炎症が卵管に及ぶなどです。
STDは、淋病、トリコモナス、クラミジアなどがあります。

卵管性不妊で最近増加している原因が、クラミジア感染症です。
卵管炎、子宮内膜炎、子宮頸管炎など、だんだんと拡大していきます。

着床障害による不妊

子宮内膜に受精卵が張りつくことを、着床と呼んでいます。
着床したときが、妊娠したときです。
弊害があって着床することができないことを、着床障害といいます。
精子と卵子が受精をし、その受精卵が子宮腔に辿り着いても、着床障害の場合は着床することができないのです。

子宮内膜の状態が良好でない場合に、着床障害になるケースがあります。
着床するためには、子宮内膜の状態や厚みが適していなければなりません。
黄体ホルモン(プロゲステロン)と卵胞ホルモン(エストロゲン)の影響を受けて、月経が始まってから子宮内膜が肥厚していきます。
妊娠していないときは生理がありますので、通常では月経によって剥がれ出ていくものです。

黄体ホルモンなどの分泌量が少ない場合は、着床に十分な厚さの子宮内膜にならないことから、不妊となってしまいます。
子宮内膜が6mmより薄いと、黄体機能不全や着床障害となって、妊娠が困難になります。

不妊を疑って、着床障害かどうかを確認したいときには、病院の超音波診断を受けると、子宮内膜の厚さを計測することができます。
妊娠に十分な子宮内膜の厚みは、排卵から黄体期の計測で8mm以上です。

排卵から数えて7日目くらいの黄体期中期は、着床期内膜(分泌期内膜)と呼ばれており、着床に最適な時期なのですが、発達が先にずれてしまうケースもあります。
子宮内膜の分化(発育)が、受精卵の着床よりも後になってしまうことで、不妊になることもあります。

排卵障害による不妊

排卵障害が原因で、不妊になることがあります。
不妊は、男性と女性のどちらも原因を抱えている可能性が考えられますが、女性が原因の不妊では排卵障害が最も多いといわれています。

卵子が卵巣から排出することを排卵といい、健康な状態では月経周期に1回の排卵があります。
基礎体温をはかっていると、排卵をする排卵日前は低温期、以降は高温期を迎えますので、排卵障害になっていないかどうか、自分でもチェックできることが多くあります。

妊娠するためには、精子と卵子が1つになる「受精」を行い、子宮内膜にこの受精卵が「着床」と呼ばれる、貼りついた状態が必要です。
卵子を排卵しない排卵障害の状態では、精子と1つになりようがありませんので、赤ちゃんの誕生にも当然至りません。

排卵障害と関わりが多いのが、ホルモンによる影響です。
排卵障害は、月経周期が一定していない「生理不順」や、全く排卵がない状態の「無月経」などがあります。
排卵障害を引き起こす要因は、内分泌性タイプと心因性タイプの2通りに大きく分けられます。

不規則な生活習慣を送っていたり、体に負担が大きいダイエットをしたり、極度の緊張状態、重圧、ストレスが日常定期なることなどが考えられます。
月経不順や無月経になることは、ホルモンバランスが整わなくなることから引き起こされます。
女性の身体はデリケートなので、労わってあげることが大切なのですね。

排卵障害に関係するホルモンは、卵巣・下垂体・視床下部の3カ所から分泌されているもので、通常ではこれらが正常なバランスを保っています。

不妊の助成金

不妊のときに受けられる、助成金があります。
助成事業は、都道府県と市区町村とがありますので、お住まいのエリア別に確認してみてください。
年度によって不妊助成金の内容が変更になることも多いですから、時折チェックし直してみることも大切でしょう。

東京都を例にあげると、1回の治療に対して上限15万円、初年度は助成3回までなどの決まりが設けられています。
対象となるのは、医療保険の適用外であるものの一部です。
経済的な負担を軽くするために、特定不妊治療の高額な費用をサポートしてもらえるのです。
郵送にて、都庁の家庭支援課母子医療助成係まで書類を申請します。

要件も全て満たしている夫婦であれば、申請が可能です。
事実婚では助成の対象になりませんので、法律上婚姻をしている夫婦である必要があります。
夫婦共に都内在住か、夫か妻のどちらかが国内の都外に住んでいるケースは、所得が高額な方が都内に住んでいることなど、いくつかの条件があります。

助成事業のネーミングは、自治体によって異なります。
例えば東京都内の区や市では、千代田区は「こども・教育部こども支援課」、文京区では「保健衛生部健康推進課保健係」など、付けられている名称がさまざまです。
分からないときは、代表に問い合わせてみてください。

少子化が進む時代なので、こうしたサポート体制に積極的に取り組んでいる土地が多くなっています。
住まいをこれから選ぶという方々は、助成金などについて調べてから、住居選びをするのも1つの方法です。

多嚢胞性卵巣症候群による不妊

不妊の原因が、多嚢胞性卵巣症候群である場合があります。
PCOSと呼ばれることもあり、英語で多嚢胞性卵巣症候群のことをPolycystic ovary syndromeということからきています。

卵胞が卵巣の中に多くある場合でも、排卵を可能にするには、厚みがあって硬い卵巣の表皮ほど困難になってしまいます。
多くの嚢胞が、腫れた卵巣内に存在する病態のことを多嚢胞性卵巣と呼びます。
多嚢胞性卵巣の状態にある女性のうち、90%近い方が排卵障害です。
多嚢胞性卵巣症候群は、その排卵障害と診断された方の20%~40%にみられるということです。

多嚢胞性卵巣症候群は、排卵がないことから引き起こされる不妊、月経異常、卵巣の多嚢胞性腫大、肥満、多毛などが現れます。
多嚢胞性卵巣症候群で最も象徴的なのは、卵巣の形態が「白膜の肥厚」を起こしたり、「卵巣の嚢胞状腫大」をするという変化です。
液体を含んだ嚢胞状態の小卵胞が、1cmより小さな段階で育たなくなったままのものが、卵巣の中に多くでき、卵巣が大きくなって、通常の2倍を上回るほど肥大するケースもあります。

コラーゲン線維が沈み込んだことから、卵巣の皮である白膜が硬く厚みをおびます。
排卵の実現には、硬くなってしまうとよくありません。
妊娠可能な卵巣の白膜は、厚さが0.1 mmほどですが、多嚢胞性卵巣の場合は0.15mm以上になります。
悪化すると、0.5mm~0.8mmもの厚さになる場合もあります。

妊娠に不可欠な精子のしくみ

赤ちゃんが誕生するためには、お父さんの精子とお母さんの卵子が必要です。
人間の精子は、核と先体がある「頭部」、それに付いている「中片部」、しっぽのように細長い「尾部」の3つで主に成り立っています。

おたまじゃくしの頭に似た頭部は、内部に核をしまっており、核にお父さんの遺伝情報が入っています。
頭の先のような先体は、精子を守るヘルメットのようになっていて、これが外されると酵素を出すことができます。
酵素が出るのは、卵子を目前にしたときです。
卵子をおおっている膜は、この酵素により溶けるので、卵子の中に入り込むことを可能にしてくれます。

中片部は頭部と尾部の真ん中にあり、ここにミトコンドリアがあります。
このミトコンドリアは精子のエネルギーを生成しており、このパワーが尾部に届くと稼働して、前進できるという仕組みです。

人間の視力では見えないほど精子の全長は小さく、0.05mmのおよそ50μm(マイクロメートル)という大きさです。
精子は、受精することによってお父さんのDNA情報を卵子に届けてくれるという、大切な役割を持っています。

父親のDNA情報を卵子まで運ぶために、射精後の精子は膣の中を10時間以上も泳ぎ続けることになります。
最短距離で到達できる場合でも、およそ17cmあります。
17cmというと短いように思われるでしょうが、人に置き換えると6km近い距離にあたるということです。

膣内を泳ぐ環境は決して順調なものではないので、なかなか卵子まで泳ぎきる精子は少ないことから、不妊症の状態が生じるわけですね。

夫婦の健康と不妊への誤解

不妊の状態というのは、体を整える必要があるのだと判断できます。
妊娠をしないからといって、必ずしも不妊治療を行わなければいけないわけではないのですが、世間の風潮からか誤解されやすいものですね。
子供をもうけるつもりがないご夫婦に対して、親戚や職場などの人たちは、欲しいけれど授からないのだという一方的な思い込みを植え付ける傾向がまだまだあるようです。

不妊治療は、始めたからといって絶対に赤ちゃんを授かるわけではなく、妊娠のさまたげとなっているものを取り除く作業です。
妊娠を促進する治療ではなく、問題の除去を行っています。

妊娠に対して特にさまたげるものがない夫婦でも、妊娠率は1周期につき2割~3割程度です。
不妊といわれる状況とは、この妊娠率が1割や全くの0割になっているときのことです。
不妊治療を行ったら、妊娠率が10割になるような誤解をしている方もいます。

医療機関で不妊治療を開始したら、注射や投与によって赤ちゃんを授かるわけではありません。
生殖に対して補助をしていくことを、不妊治療といっています。

妊娠を実現するということは、生殖力から可能になるものなので、精子が活発であることや、卵子がいい状態であることなど、親の健康状態が必要です。
生殖器官である精巣や子宮、卵巣は、生命の誕生と直接関わりがある器官です。
言い換えれば、健康であることが、良好な状態の精子や子宮、卵巣につながっていきます。
赤ちゃんについて考える前に、自分たちの一度しっかり健康状態を振り返ってみることが、大切なベースとなるでしょう。

病気じゃない年齢による不妊症

不妊症は、妊娠をしにくい状態に体がなっているということであり、たいていは病気ではありません。
中には、病気が原因で不妊になっていることもありますが、珍しいケースです。

不妊症と「症」のつくネーミングであることから、病気の症状を現しているように思えますが、2年の間避妊をせずに妊娠しない場合を不妊症であると、日本産婦人科学会では定義づけています。
一定の年月を後から振り返り、妊娠しなかったことを不妊症と呼んでいるだけであり、病気のように体の状態のことではありません。

不妊治療を受けているなどと聞くと、体質に異常を抱えているように誤解されるかもしれませんが、ほとんどのケースは健康状態が悪いわけではありません。
妊娠するために必要な力を妊孕性といいますが、ただ妊孕性が低いというのみで、不妊症とされているのです。

妊孕性は、女性の年齢からの影響が最も大きいといわれています。
年齢的な体の機能が低くなった影響は、ある程度の年を重ねていれば、誰もが日常生活の中で感じていることでしょう。
急に走ったとき、以前に比べて早く息切れをするようになったら、年齢の影響をまず考えるのではないでしょうか。
年相応に体力が低下した場合、それを改善しようと治療を受ける人はいません。
まず、体力作りが必要だと考えるでしょう。

毎日ストレッチや適度な運動を行って、体力の向上をはかろうとするはずです。
不妊の場合でも、同様のことが言えます。
中には、病気が原因というケースも否定はできませんが、一般的には体をきたえるなどして解決していこうとします。
不妊治療を受けるご夫婦が増えているのは、高年齢化や晩婚化が進んでいるからといえそうです。