子宮異常による不妊

不妊の原因が、子宮の異常による場合があります。
受精をするためには、排卵後の卵子が精子に卵管の膨大部で出会う必要があります。
卵管の中の子宮腔まで移動した受精卵は、着床するために子宮内膜に潜むのです。

このときもし子宮に異常があれば、胎児の成長が困難になったり、流産をしたり、それ以前に受精卵が着床することすらできないこともあります。
考えられる子宮の異常は、子宮内腔の掻爬などにより癒着が引き起こされたケースや、良性腫瘍の子宮筋腫などができているケース、子宮の形状に生まれつきの異常がみられるケースなどです。

子宮筋腫による不妊は、40歳くらいの女性の約3割をしめるほど多い原因です。
子宮の筋肉はとてもやわらかい特徴を持っているのですが、子宮筋腫という丸くて硬いコブができると、腫瘍としては良性ではありますが、妊娠のさまたげになる可能性がでてきます。
子宮筋腫の成長は、卵胞ホルモン(エストロゲン)からの影響が大きく、コブができる箇所により、粘膜下子宮筋腫、筋層内子宮筋腫、漿膜下子宮筋腫に分類されます。

コブができる箇所次第で、子宮筋腫があると診断されても、妊娠できる女性は大勢いますし、困難な場合もあります。
受精卵が着床する邪魔になりがちなのは、子宮内腔を変形させるタイプの筋層内子宮筋腫や、粘膜下子宮筋腫などです。

粘膜下子宮筋腫は、コブのサイズがどんなに小さくても、妊娠しにくくなります。
一方で漿膜下子宮筋腫は比較的妊娠が可能ですが、コブが大き過ぎると不妊を引き起こします。

男性側にある不妊の原因

赤ちゃんはお母さんから産まれてくるためか、以前は不妊の原因というと、女性側に問題があるという先入観がありました。
現在では、男性側に原因がある可能性も高いことが分かっており、不妊治療や不妊検査は、二人で受けることが一般的になっています。

男性側に不妊の原因があるケースで多いのは、原因がまだ明らかになっていない、特発性造精機能障害によるものです。
精子が精巣内で生成される量が、減少してしまいます。
ちなみに特発性造精機能障害に続いて男性側の要因で多いのは、精索静脈瘤です。

精子がしっかり精巣内で生成されているにもかかわらず、移動できないことから受精に至らないケースもあります。
精路閉塞症は、精子が運ばれる輸送路がふさがってしまっている状態です。
精路欠損症は、先天的にこの輸送路が存在していないというものです。

逆流性射精という不妊原因は、精子が射精後に膀胱へと逆流してしまいます。
可能性があるのは、精液の量が1mlに満たないほど少量のケースです。

無精子症は、精子が精液の中に1つも存在していない状態です。
無精子症は、染色体異常で引き起こされる場合があります。
自然妊娠は難しいとしても、決して妊娠できる可能性が皆無なわけではありません。
精子が、精巣自体や精巣上部にある男性が多いので、赤ちゃんを授かる方もたくさんいらっしゃいます。

自然妊娠の可能性があまり高くない原因には、精子無力症、乏精子症、奇形精子症などがあげられます。
男性側の不妊原因といってもいろいろありますから、それぞれに応じた適切な対処が重要です。

卵管留水腫による卵管異常の不妊

細菌などに卵管が感染すると、炎症になってしまう場合があります。
卵管留膿症は、この炎症によって膿や分泌物が卵管の内部に蓄積され、腫れた状態のことです。
卵管留水腫は、この炎症がさらに悪化し卵管采が卵管の先端をふさいで、内部の膿や分泌物を吸い取り、水が蓄積されてしまった状態のことをいいます。

卵管留水腫になって卵管采が閉塞されてしまえば、卵管の中に卵子をとり込むことができませんので、不妊になるのです。
卵管は2つありますので、どちらかの卵管が健康なままのときは、自然妊娠することが十分可能です。
卵管の卵管采が2つとも閉塞しているときは、体外受精によって妊娠できる可能性があります。
病院で子宮卵管造影などを受けたときに、卵管留水腫を見つけられます。

子宮内膜症の検査では最初に問診があり、症状になにか特徴的な異変はないか確認していきます。
問診に続いて、内診があります。
内診では嚢胞が卵巣にできているか、痛みを感じるしこりができていないか、子宮の裏側が硬い状態になっていないかなどをチェックします。

CT検査やMRI、超音波検査などの方法を取る病院もあります。
血液検査を実施した場合、卵管留水腫の可能性が考えられるのは、CA19-9やCA125が高い数値を示したときです。
腹腔鏡検査を受けることは、体に負担がありますが、診断結果の確実性が高いといわれています。
不妊を調べる検査方法は、医師の説明を十分に受けて、納得した上で行いたいものですね。

子宮内膜症による卵管異常の不妊

卵管の異常が招く不妊に、子宮内膜症があります。
子宮内膜症を発症すると、性交のときに痛みが現れたり、生理のときに痛くなったりなどの異変を自覚するでしょう。
生理痛が次第に悪化してくるようであれば、子宮内膜症を疑って病院で診てもらってください。
子宮内膜症にかかると、必ずしも痛みの症状が現れるとは限りません。
中には、診断を受けるまで全く気付かないという方もいます。

卵巣ホルモンの機能の影響を受けて、子宮内膜は内壁が増殖する性質を持っており、受精卵のベッドの役割を果たします。
生理の際に剥がれて、出血と一緒に体外へ排出されます。
子宮内膜症を発症したとき、子宮の裏側に位置するダグラス窩という箇所や、子宮の筋肉内、卵巣の周りや卵巣自体に、子宮内膜と同様の組織が生えて増殖するのが子宮内膜症です。

異所性の子宮内膜と呼ばれ、組織が生えた場所から血が出たり炎症ができたりしたのち、癒着となって溜まった血液ができるのです。
血液が卵巣内にそのまま蓄積されていけば、卵巣嚢胞ができてしまいます。
卵巣嚢胞となった血液が古くなったものが、卵巣チョコレート嚢胞です。

子宮内膜症がやわらかい子宮の筋肉内に発症して、そこから血が出たら、徐々に筋肉が硬くなって腫れてしまいます。
子宮腺筋症という病気は、こうして発症していくのです。
子宮内膜症が卵巣に生じると、卵巣の周りの癒着を引き起こしたり、排卵の邪魔となって、卵子が卵管まで移動できないようにさせてしまいます。

子宮外妊娠などを招く卵管異常

不妊の原因は、男性側と女性側のどちらにも可能性があります。
女性側に不妊の原因があるケースでは、卵管に異常がある場合が最も多いといわれていることをご存知ですか。
卵管はとてもデリケートなもので、まるでガラス細工のように壊れやすい性質を持っていますから、働きが低下したり異常が起きやすいのも納得できます。

卵管の近くで癒着などが発生したり、卵子を何回か捉えると、機能がおとろえてしまいます。
卵管異常が深刻になると、卵管が詰まってしまう卵管閉塞や、卵管の内側の幅が狭くなる卵管狭窄になることがあります。
ダメージを加えられた卵管は、卵子が卵巣から排出されたとき、なかなかつかむことができなくなったり、せっかくつかんだ卵子を子宮まで卵管を通過して届けられなかったりすることから、妊娠できない状態が続きます。

卵管異常によって子宮外妊娠するケースがあり、それは卵管内で受精してしまった場合に起こります。

不妊の要因が卵管因子にある場合は、子宮内膜症や卵管炎が危険です。
子宮内膜症は、卵巣チョコレート嚢胞や子宮腺筋症も含まれます。

卵管炎は、子宮内部や膣に、性交渉などを通じて病原微生物が入り込んだとき、炎症が周りや卵管内に発症してしまうというものです。
卵管炎は、弱くてやわらかな卵管の性質から、繊毛がなくなったり、閉塞してしまうという症状が現れます。
卵管炎を引き起こす病原微生物はクラミジアが多く、その他にはマイコプラズマやウレアプラズマ、大腸菌などの細菌、淋菌などがあげられます。

甲状腺機能の異常による排卵異常

不妊の原因として、甲状腺機能の異常による排卵異常が潜んでいることがあります。
不妊に関係する甲状腺機能の異常は、大きく分けて2種類に分類できます。
どちらの場合でも、流産や無排卵症を引き起こす可能性があるでしょう。

1種類目は、甲状腺機能低下症です。
橋本病が代表的であり、甲状腺機能が下がることによって、欠かすことのできないホルモンの分泌量が少なくなります。

2種類目は、甲状腺機能亢進症です。
パセドウ病が代表的であり、甲状腺機能が亢進することによって、ホルモンの分泌量が少なくなります。

甲状腺機能の異常を発見するためには、病院で血液検査を受けることです。
TSH(甲状腺刺激ホルモン)やHL(甲状腺ホルモン)の数値を、血液検査で確認すれば、甲状腺機能が正常かどうか明らかになるでしょう。
例えば、血液検査の結果でTSHの数値が高ければ、甲状腺機能低下症の可能性が高いということになります。

不妊の原因となる甲状腺機能の異常は、どのようにして発症するのでしょうか。
ストレスなどがあると、可能性が高まると考えられています。
体型が過剰にスリムな方は、それが原因で甲状腺機能低下を引き起こすかもしれません。

一般的に排卵異常を招く原因として、甲状腺機能異常以外の要因であっても、強烈なストレスはよくないといわれています。
ストレスを溜め込み過ぎないように、好きな趣味に没頭できる時間を作ったり、1日のうちでリラックスできるひとときを設けたりなど行ってみてください。

PRLによる排卵異常

排卵異常の1つに、PRL(高プロラクチン)血症があります。
赤ちゃんが生まれた後にお母さんから母乳が出るのは、たくさんの高プロラクチンが脳下垂体から分泌されるからという構造により、乳汁分泌ホルモンとも呼ばれています。

高プロラクチンの分泌量が豊富になる授乳期間には、一般的に排卵しなくなるものです。
症状として高プロラクチンが分泌する量が増えることを高プロラクチン血症といい、黄体機能不全や無排卵を引き起こします。
乳汁が出ることにより、高プロラクチン血症を疑って受診される方もいます。

高プロラクチン血症は、どんな要因から発症するのでしょうか。
脳下垂体のプロラクチン産生腫瘍、多嚢胞卵巣症候群、甲状腺機能の低下、ストレスなどから引き起こされます。
精神安定剤や胃薬などの医薬品を服用していることで、高プロラクチン血症を招くケースも見受けられるということです。

高プロラクチン血症かどうかは、血液検査で判明します。
血液内のプロラクチン値という数が検査結果で明らかになるのですが、さまざまな要因の影響を受けやすいので、1回の血液検査では結論を断言できません。
高プロラクチン血症だと診断が下されて実際に治療を開始する前にも、再度検査が行われるほど慎重に見極めます。

高プロラクチン血症の検査結果は、内診を終えてからや初診のとき、乳房の触診後などに、特に高い数値が出やすい傾向があるものです。
慎重に検査をしてくれる病院ほど、安心して治療に専念できそうです。

卵巣機能の低下による不妊

卵巣機能の低下が原因で不妊になるケースは、LUF(黄体化非破裂卵胞症候群)や卵巣性無排卵などがあります。

原始卵胞という卵子の大元が、卵巣内には多く存在していています。
卵巣の一方に卵胞が1つ育つと、そのうち卵胞が破壊をして排卵します。
原始卵胞が通常サイズよりもあまりに減少し、排卵が困難になった状況のことを、卵巣性無排卵と呼んでいます。

無排卵症の種類は複数ありますが、卵巣性無排卵の治療は最も困難です。
卵巣性無排卵かどうかは、血液検査を受けると明らかになります。
血液内に卵巣刺激ホルモン(FSH)が多い場合、原始卵胞が卵巣内で少ないと判断されます。
原始卵胞が少ない場合、月経周期の2日目~5日目のFSH基礎値が、10IU/Lよりも高くなります。

一般的に不妊の場合、基礎体温を計測して、高温期と低温期がある2相性がないケースが多いのですが、LUF(黄体化非破裂卵胞症候群)による排卵異常の場合は、しっかり2相性があるのでわかりにくいといえます。
2相性があるので、排卵があると勘違いしてしまうからです。

通常であれば、卵胞が育って排卵期を迎えたときに卵胞が破裂するものなのですが、LUF(黄体化非破裂卵胞症候群)は排卵がないままで黄体に卵胞が変わるという特徴を持っています。

黄体化非破裂卵胞症候群と判断されるまでには、病院で超音波検査を何回か続けて受け、卵胞の経過観察が行われます。
黄体化非破裂卵胞症候群と診断された場合の治療方法は、容易に治せるものから難しいものまでさまざまです。

簡単な治療で治る排卵異常

排卵異常によって不妊になる場合、複数の原因が考えられます。
その中でも、適切な治療をほどこせば比較的簡単に改善する排卵異常もあります。

排卵異常の原因として、最も多いと言われているのがPCOS(多嚢胞卵巣症候群)です。
高アンドロゲン性慢性排卵障害といわれることもありますが、男性ホルモンが常に過剰な状態にあります。
多嚢胞卵巣症候群については、まだ大勢の研究者が進めている状況ですが、患者さんの卵巣内には小嚢胞がたくさん確認されます。

無月経や月経周期の間隔が長引くなどの異変により、病院で診察を受けて、多嚢胞卵巣症候群がわかるケースがあります。
男性ホルモンが多いということから、多毛などの男性的な異変が現れることも少なくありません。
ニキビや肥満などになる方も見受けられます。

内分泌機能が下がって、排卵異常になるケースもあります。
GnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)などの分泌量が、視床下部の働きが弱まったことが原因で足りなくなると、排卵しにくくなり、不妊に至ります。
TSH(甲状腺刺激ホルモン)やPRL(乳汁分泌ホルモン)、FSH、LHなどの脳下垂体ホルモンの分泌量が、脳下垂体の働きが弱まることによって減少すると、排卵が困難となって妊娠しづらくなる場合があります。
病院で血液検査を受けると、発症しているか明らかになります。

いずれの排卵異常も、比較的簡単な治療でよくなると言われていますから、自覚症状があったときは、早めに医師に相談してみてください。

過酷なスポーツなどが原因の不妊

排卵がなければ妊娠することはできませんが、過酷なスポーツをしていたり、体重を増やすもしくは減らすことで、排卵が全くなくなってしまうケースがあります。

過酷なダイエットを行う場合に、レプチンと呼ばれるホルモンに関係する方法が、不妊の危険をともないます。
脂肪細胞を生成する満腹ホルモンのレプチンは、おなかが一杯に満たされたときに分泌し、脳に働きかける性質を持っています。
それによって食欲がおさまり、甲状腺ホルモンや性腺刺激ホルモンの分泌量が増加します。

過酷なダイエットを始め、いつもおなかが空いている状態が続けば、レプチンが出なくなり、甲状腺ホルモンや性腺刺激ホルモン(LHやFSH)も抑えられてしまうので、結果的に甲状腺機能の低下、無月経、無排卵を招いてしまいます。

不妊になる無排卵は、スリムな体型や肥満から引き起こされるケースもあります。
肥満の世界的な判断基準であるBMI(ボディマスインデックス)を、身長や体重から算出してみてください。
妊娠しやすい方は、BMIの数値が正常の範囲内です。

ボディマスインデックス(BMI)の算出方法は、体重÷身長÷身長で出ます。
正常値は、算出された数値が20 ~24kg/m2の範囲内です。
身長が仮に160センチ、50キロの体重であったとすると、BMIは50÷1.6÷1.6=19.5です。
BMI19.5は20から24に近い範囲内なので、ほぼ正常値だとわかるのです。
BMIの数値が19を超えなければ、初潮になりにくいそうです。