女性の排卵異常による不妊

排卵異常というと、とても怖い状態のように聞こえますが、生理が規則正しい周期でこなかったり、全く月経がない場合などのときに疑いが持たれます。
月経周期である28日間ごとに排卵が起きていれば、妊娠の可能性が高まります。
稀発排卵と呼ばれる、数ヶ月おきにしか排卵がない状態だったり、無排卵という排卵が全く起こらない状態は、不妊と言えるでしょう。

一定の周期で排卵があるときは、卵巣・脳下垂体・視床下部の3カ所の連携が取れている状態です。
無排卵は、この3カ所のどれがうまく機能していない場合でも起こりえるものです。
強烈な感情の起伏やストレスは、妊娠に悪影響を及ぼすと考えられるのは、大脳皮質が視床下部に与える影響があるためです。
女性側に原因がある不妊は、2番目に排卵異常が多いので、リラックスしたり気持ちにゆとりを持つことが大切なのですね。

生理が不規則な方は、排卵異常の可能性が考えられます。
基礎体温を毎日計測して、表に記録しましょう。
高温期と低温期が存在する2相性になっていれば、一般的に排卵があるといわれます。
まれにですが、例外的に2相性でも排卵がないケースもあるということです。
高温期と低温期がなく、ずっと一定の体温が続く1相性は、一般的に排卵が順調に起こっていないと見なされますが、まれに排卵がある1相性の女性もいます。

排卵異常になる原因は複数考えられますが、PCOS(多嚢胞卵巣症候群)が最も多く、治療方法は症状や進行具合によって、簡単なケースも難しい場合もあります。

腹腔鏡による不妊検査

腹腔鏡は内視鏡検査に使用されるもので、ラパロスコープとも呼ばれています。
名前にある通り腹腔内を調べることができ、腹部の外側から1センチ程度の穴をあけます。
腹腔鏡と超音波との大きな違いは、直接見られることから、腹腔内の癒着や卵巣、卵管などについていろいろと確認できることです。

腹腔鏡は、要因が特定できない機能性不妊や卵管性不妊のときに最適な検査方法です。
骨盤腔を直接見ることができ、5ミリ~1センチの直径の内視鏡を、腹腔内へとへその下付近から挿入させます。
癒着や子宮異常、卵管形態、子宮内膜症などを調べることが可能です。
こうした骨盤腔の病変を発見したら、同時に腹腔下手術をほどこすことができます。

腹腔鏡によるこうした検査を行いながら、並行して卵管通色素法という検査方法もすることができます。
卵管通色素法は、色素を子宮頚管に流すというもので、腹腔内を通過する色素を見て、卵管の通りを確認していきます。

不妊検査を1種類行い、特に問題はないという結果が出た場合でも、なかなか赤ちゃんを授からない原因不明の機能性不妊におちいったときは、腹腔鏡検査が勧められます。
腹腔鏡検査を受けたことで、妊娠の妨げとなっていた問題が発覚するケースが多く出ています。

不妊の原因として1番多い子宮内膜症の検査は、超音波では難しい場合があるのですが、腹腔鏡検査に切り替えることによって判明することがよくあります。
不妊で悩む多くの女性に、腹腔鏡は役立てられているのですね。

子宮鏡検査による不妊検査

不妊かどうか、外来でも簡単に調べられるのが、子宮鏡検査です。
子宮鏡検査は不妊外来で使用される以外に、子宮内膜癌、子宮内異物、子宮腔癒着症、粘膜下筋腫、子宮内膜異型増殖症、子宮内膜増殖症、内膜ポリープを調べることができます。

管の先端にカメラが搭載されている、外径3mm程度の内視鏡を、子宮腔に挿入して検査を行います。
医師から子宮鏡検査を受けた方がいいと言われるのは、経膣超音波検査や子宮卵管造影検査を行った後に、子宮腔に異常があるかもしれないという結果だった場合です。

子宮腔の健康状態を確認する方法として、以前の主流は超音波断層法や子宮卵管造影でした。
ヒステロファイバースコープ(細経子宮鏡)の開発にともなって、検査が大幅に簡単なものとなっています。
頸管拡張や麻酔を使用しなくても、現在では子宮腔内を調べることが可能になりました。

ヒステロファイバースコープは検査用だけでなく処置用もありますので、検査によって異常が子宮腔内に確認された場合でも、癒着剥離や切除などの治療がほどこせるケースも出ています。

ヒステロファイバースコープは、ワイヤーをスコープの先端に取り付け、医師が操作レバーによって先端を屈曲させるなど、検査したい箇所を自由に調べられるというものです。
ヒステロファイバースコープは、処置用と診断用以外に、電子子宮鏡ともいわれるビデオヒステロファイバースコープがあります。
スコープの先端に内蔵されている電荷結合素子(超小型CCD)が、医療に役立てられています。

フーナーテストによる不妊検査

不妊検査の一種であるフーナーテスト(ヒューナーテスト)は、子宮頚管粘液内に存在する精子の状態を、性交の後に調べるという内容です。
フーナーテストの約12時間前までの性交渉が必要で、粘液を子宮頚管の中から採取します。
粘液の中に精子があるかを、400倍視野の顕微鏡にて確認します。

見当たらない場合は、子宮頸管炎、抗精子抗体、無精子症などの可能性が考えられるでしょう。
数多くの運動性精子が存在してれば、妊娠ができる可能性が高まります。
フーナーテストに最適のタイミングは、排卵直前です。
理由は、このときが頸管粘液の分泌量が最多だからです。

妊娠できる可能性が高い運動性精子の数とは、どんな基準で判断されるのでしょう。
400倍視野の顕微鏡で見たときに、数が4個以下は不良、5個~9個は可、10個~14個は良、15個以上確認できれば優とみなされます。

運動性精子があるということは、不動精子があることになります。
顕微鏡で不動精子しか見当たらなかったり、ほとんどが不動精子というときは、抗精子抗体の可能性が考えられます。
抗精子抗体と呼ばれる抗体は、精子の運動能力を低下させる性質を持っており、免疫性不妊を引き起こす原因です。
運動精子数が4個以下の不良という結果がフーナーテストで出た場合は、次に抗精子抗体検査によって原因を突き止めていきます。

フーナーテストで運動性精子の数を多くするためには、男性の食生活を整えたり、十分な睡眠時間を確保したりなどが効果的でしょう。
マカや漢方などでいい結果が現れたという意見もあります。

子宮卵管造影検査による不妊検査

卵管や子宮腔をX線撮影するという不妊検査方法を、子宮卵管造影検査といいます。
X線撮影を行うときは、子宮腔内に造影剤を入れて、造影剤が腹腔内を移動する様子をとらえるのです。
不妊症の悩みで受診された女性が、実際に子宮卵管造影検査を体験すると、かなりの激痛が走るということで、インターネットの口コミなどにも多くの方が感想を寄せています。

うわさ通り大変な痛みだったという人もいれば、覚悟ができていたのでなんとかやり遂げられた、つらいけどガマンできたなど、いろいろな感想が目に留まります。
子宮卵管造影検査は痛いということで、あまり身構え過ぎてしまうと、体に力が入ってしまうことから、器具がスムーズに挿入しづらくなってしまうケースもあるようです。
恐怖心を抱え込みすぎて、そのことが激痛を助長させてしまうことも考えられますから、経験する前に頭で考え過ぎないことも必要かもしれません。

痛い思いをするといわれる子宮卵管造影検査ですが、受けるだけですばらしいメリットが生まれることも期待できます。
ゴールデン期間と呼ばれるもので、子宮卵管造影検査を終えてからの3カ月間、もしくは6カ月間程度は、妊娠しやすくなるというのです。
ゴールデン期間がもたらしてくれる恩恵のしくみは、造影剤のヨードの作用で、卵管を開いたり、卵管に詰まっていた汚れを除去できることなどが考えられています。

子宮卵管造影検査の先輩たちの経験談などを参考にして、不妊検査を選ぶときに、役立ててみてはいかがでしょうか。

精液検査による不妊検査

不妊検査は女性が行うだけでなく、男性側の検査もあります。
不妊になった原因が男性側にあるケースは、全体の30%~40%にものぼっていますので、男性も女性も調べる必要があるのです。

女性が受ける不妊検査に比べて、男性の精液検査はとても楽ですし、痛い思いをすることもありません。
正式名称は一般精液検査といい、主に以下の項目を調べることになります。

精子濃度は、1mlあたり2,000万個以上あるか。
精液の量は、2mlを上回るか。
精子運動率は、25%以上の高速直進運動精子、もしくは50%以上の前進運動精子であるか。
50%以上の生存率があるか。
30%以上の正常形態精子を確認できるか。
白血球が、1mlあたり100万個未満か。
MRAテストにおいて、結合性が50%未満か。
イムノビーズテストで、結合性が50%未満か。

採取する場所は、自宅でも構いませんし、病院でも専用のスペースが設けられています。
専用のプラスティック容器が渡され、その中に採取するのですが、病院まで2時間~3時間以内に持ち込む必要性がありますので、遠方にお住まいの場合などは院内で採取することになるでしょう。

持参するとき、時間だけでなく温度にも気を配らなければなりません。
25度以上で、適温は31度~33度です。
温度が高温過ぎてもよくありませんから、移動に自信がない場合は、やはり病院内で採取した方が確実です。

1回の精液検査では、確実な判断は難しいということで、2回は受けることになります。
2回の精液検査の内容があまりにも異なるようであれば、再チャレンジという流れです。

基礎体温測定による不妊検査

基礎体温測定を行うことは、排卵日を予想したり、排卵があるかを確認したり、検査に適した日程を決めるのに役立ったり、黄体機能不全か診断することなど、多くの利用が可能です。

基礎体温測定は、28日の月経周期に対しておよそ14日間の低温期があると、次に14日間近い高温期を迎えるという繰り返しを確認し、卵巣を診断する指標に役立てられています。
通常は低温期から高温期に移るときが妊娠しやすい排卵日となり、高温期から低温期に変わるタイミングで月経が始まります。
基礎体温測定は、不妊症の診断で最も重要視されているデータです。

不妊の悩みで病院を訪れるとき、基礎体温測定によって妊娠の状態が続けられるかどうかや、排卵の有無をチェックします。
基礎体温表を見ただけで、これらについておおよその判断が下せるのです。

不妊症で病院を受診されるときは、あらかじめ基礎体温を計測してから行かれることをお勧めします。
理想は、月経周期3周期分以上の基礎体温表です。
少なくとも、1周期分は用意していった方がいいでしょう。

診察を受けてから、まずは基礎体温表をつけてきてくださいといわれることが多いものです。
3カ月近い基礎体温表があらかじめ用意されていれば、その分診察を受ける時間や回数、コストを節約することにつながります。

不正出血などがあれば、基礎体温表の備考欄に記入しておくようにします。
不妊の原因をつきとめる、材料になるかもしれません。
性交日を記載することに抵抗があるかもしれませんが、重要なことですから、ひかえておきましょう。

妊娠できることも多い原因不明不妊とは

不妊症を疑って不妊治療に行ったら、必ず赤ちゃんに恵まれるというわけではありません。
クリニックで検査を受けて、不妊を引き起こしている要素を割り出そうとしますが、原因が見当たらないということがあるのです。
これをfunctional infertility(機能性不妊)、またはunexplained infertility(原因不明不妊)といいます。

専門家を受診しているのに、不妊の原因が突きとめられないなんてことがあるのかと思われるでしょうが、不妊症の方のうち全体の10%~35%にも及ぶ高い割合です。
全体の10%~35%とずい分幅がある理由は、クリニックなどにより基本とされる検査内容には違いがあるため、とてもシンプルな診断のところもあるからです。
精密検査の腹腔鏡検査も行っていれば、実際に原因不明不妊と診断される人は10%以下になるだろうと考えられています。

機能性不妊と原因不明不妊を、別々に捉えるケースもあります。
その場合に機能性不妊と判断されるのは、基本的な検査内容で原因が判明しなかったとき、原因不明不妊は精密検査まで行っても原因が判明しなかったときです。

機能性不妊と分類した上で原因不明不妊と診断を受けると、伝えられた側は精神的につらいものがあるでしょう。
しかし、原因不明不妊と告げられたあとでも、60%もの方々が3年以内の妊娠を実現していますから、気を落とす必要などないのではないでしょうか。
しかも、特に治療をほどこしたわけでもなく、自然に出産できているのです。
不妊状態の原因がわからかったとしても、あきらめるのは早いでしょう。

妊娠を妨げる頸管性不妊とは

頸管性不妊は、頸管粘液や子宮頸管に問題を抱えているとき、妊娠のさまたげとなることです。
子宮頸管は、卵子に向かって射精後の精子が、膣内を始めに通るところです。
子宮の入り口部分に子宮頸管はあり、子宮腔と膣を結ぶ細い管です。

子宮頸管から分泌される、排卵期のおりもののような粘液は、頸管粘液と呼ばれています。
おりものというと、一般的には子宮体部や膣から分泌されるものなので、全く同じものではありません。
頸管粘液が分泌されるのは、卵巣の内部で卵胞が発育したときとなります。

ばい菌が増殖しないよう、膣内はいつも酸性にキープされているのですが、精子は酸性を好まない性質を持っており、頸管粘液はこれと対象的なアルカリ性で、精子の動きを高めて受精能力の向上を促進しています。
頸管粘液や子宮頸管が備えているはずの本来の機能を損なっているとき、頸管性不妊といわれるのです。
頸管性不妊であれば、不妊になることが考えられます。

妊娠するために必要な要素として、子宮頸管を精子が通り子宮腔に到着することがあげられます。
卵子に辿り着くまでの道のりは過酷なので、精子の形や機能に異常がなく、正常であることが重要です。

頸管不妊因子といわれる、子宮頸管が正常でない場合も、受精をはばんでしまいます。
頸管粘液の状態は糸を引くような卵白状であることが望まれ、通り抜けようとする精子の動きを活性化させてくれます。
頸管粘液の状態を悪くする要素は複数考えられ、それらは不妊の原因になることが考えられます。

性機能障害による不妊

性機能障害が、不妊の原因になっているケースもあります。
性機能障害には、射精障害、性交障害、勃起不全(ED)などがあげられます。
不妊を引き起こす要因として、性機能障害は近年増加傾向にあり、約7割はEDによるものです。

EDによる不妊の悩みを年齢別でみると、50代が約4割、40代が約2割ですから、とても多いことがわかります。
EDの定義は、以前は男性性器が勃起しないこととされていましたが、最近は性交渉に満足しないという意味になっていますので、割合がとても増えているようです。

不妊症から脱却しようという時期は、どうしても義務的な繰り返しにおちいりやすいので、心因性のEDになると考えられています。
ムードもなにもなく、赤ちゃんを授かりたいという一心になってしまうと、自信喪失や性欲減退を招きやすいですから、注意が必要でしょう。
プレッシャーを感じるまでになっては、あまりいい結果も期待できませんし、夫婦間の信頼関係にも溝ができかねません。

射精障害は、食生活を見直したり運動を取り入れることで、大きな変化が得られます。
特に即効性があるといわれているのが、筋トレやウォーキングなどの運動です。
運動によって体力がついたり、気力が回復することが効果的なので、早ければ2カ月~3カ月で改善するでしょう。

お勧めの食べ物は、レンコンやゴボウなどの根菜類、おくらやとろろ、納豆などのネバネバとしたフード、ニンニク、レバーや牡蠣などの亜鉛などです。
インスタント食品やジャンクフード、外食はひかえましょう。